LONDON COLUMNING

ロンドンから音楽事情を発信していきます。音楽以外もたまにはね。

【GIG】11/9 Tomoyasu Hotei: Electric Samurai@O2 Shepherds Bush Empire

布袋寅泰さんのライブに行ってきた。場所はO2 Shepherds Bush Empire。ロンドンの中心部(センター)からCentralライン(赤)で15分くらいのShepherds Bush駅のすぐ近く。実は住むはずの宿にトラブルがあって、ちょうどShepherds Bush駅前のホテルに滞在していたので、会場は目と鼻の先。歩いて5分かからないくらいの立地ということと、何かと話題の布袋さんを現地で目撃しておこうということで、参戦を決意。

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ちなみにロンドンのVenueにはO2の冠のついたものがいくつか存在する。O2はこちらの携帯電話キャリアネーミングライツというやつ。そういえば日本でも、O-EAST/WESTがTSUTAYA〜になるとか・・・うーんあまりクールではないけれど、某炭酸飲料ホールよりはましか。名前はともかくレコード小売店が現場を持ちたがるのはもはや普通のことになってきたんだなと。タワレコ新宿店はそれで店舗の価値を高めているし、イギリスでもRough Trade Eastなんかは週末何かしらのイベントをやっているし。店舗に現場を持ってくるか、現場に店舗を輸出するかのなら僕はやっぱりまだ前者の方が刈り取りの効率が高い気がする。そもそもライブハウスには荷物を持ち歩きたくないという根本的なインサイトがあるし、帰りはなんだかんだ時間がない場合もあるし。まあ近隣店舗との連動やデジタル施策での何かしらの刈り取りをする、もしくは徹底したブランディングという目的に割り切るのであれば、ネーミングライツも活きると思うけど。

おっと、話がそれた。(O2関連Venue紹介はまた別の機会に)

会場に着くまでは、どのくらいイギリス人がいるのか期待していたのだけれど、おそらく半数以上は日本人だった。どれくらいかと多かったのかと言うと、ロンドン在住1週間程度の僕が会場でたまたま友達に会うくらい。客層としては家族連れから年配の方まで、GIGというより割とコンサートに近い層だった気がする。各界の著名人も結構来ていたようで、お客さんが「あ、あれ○○だ」みたいな感じで、二階席目がけて写真を撮っている人なんかもいた。そんな感じで前座もなく、開演時間になったので普段のライブよりもテンションの調整が難しかった。「お、いきなり始まっちゃった」くらいの感覚。そんな感じで一体どうなるんだろうと思いながら始まったGIG。でもそこは流石の布袋寅泰。始まった瞬間からエンジン全開。ご存知あの独特の存在感。トークも全部英語でしかも流暢。しかも内容が謙虚なことこの上ない。「エレクトリック侍に、パンク侍切られて候、これ致し方なし」なんて。とにかくロンドンでもっと活躍して欲しいと素直に思った。

内容としては、基本的にはギター演奏が中心で6〜7割くらいはギターを弾いて、残りを歌っていたような印象。そこでは日本語リリックの歌も歌っていた。そして特に印象に残ったのが特殊なスクリーンを用いた映像演出。演奏を際立たせるだけではなく、一つの作品としても通しで観たいくらい凝った作りだった。なかでもカタカナを使って効果音をビジュアライズしている部分があったのだけれど、言葉選びのセンスが絶妙だった。海外の映像の中で使われる日本語は妙にアニメチックであったり、行き過ぎた日本感が出てしまうものだが、日本人の僕が見てもうまくおさまっているし、映像としてカッコいいと思えるような演出だった。また今回のGIGはYoutubeで生中継されていたようで、そういう新しいことをさらりとやっているところも素敵だなあと思った。そしてGIGの途中では、Andy Mackay(Roxy music)、Mike Edwards (Jesus Jones) という豪華すぎるゲストが登場。これに関してはたまたまMike Edwardsとの「Right here Right now」がアップされていたので、是非ご覧あれ。

 
Tomoyasu Hotei & Jesus Jones Right here right ...

という何気ない観戦記くらいで締めたかったけれど、GIGを観てかっこいいと思ってしまったので、あえて色々布袋さんに提案してみたいと思う。「布袋/ロンドン/Shepherds Bush」で関係者および本人がエゴサーチしてくれることを信じて。ネット上にはレポート的なものもほとんどなくて、骨太なものもなかったように思えたので、きっと届くと信じて書き記そうと思う。

彼は今ロンドンを中心に活動を行っている。今回もShepherds Bush Empireで大入りと言えるくらいの集客だったし、興行的には上々という感じだろう。日本からのファンがわざわざ参加して、Meetup的なものに参加できるHISのパッケージも20万円以下で販売されていたそう。(航空券・宿泊費込みということを考えると結構両親的な価格だと思う。)という風にわざわざ日本からイギリスにこのGIGのために渡英するファンがいること、さらに会場は多くの日本人に占められていたことを考えると、日本の布袋ファンからの信頼は抜群に高い。まさに布袋ブランド。あのギターのイラストに象徴される布袋寅泰ブランド。僕の同居人の台湾人だって、「布袋さんのギターは凄い。美人な奥さんいるよね」って言ってくるくらい知名度がある。もはやレジェンドである。

でも僕は彼の「レジェンド」と評されるような彼のブランドより、いきなりRIP SLYMEと競演したときのような彼のチャレンジングな遊び心が好きだ。(今回の映像や中継もそう)そして都合のいいことに、ロンドンには若くて才能のある面白いアーティストがたくさんいる。そして現在の日本では考えられないことだが、年間のトップ10チャートにIndieロックが普通にさらりと名前を並べているような国なのである。しかも今年で言うとJAKE BUGGやTHE STRYPESみたいなこれからのシーンを作るであろうニューカマーもロックシーンからちゃんと登場するような国である。アイドルと一緒に何かをしないと最先端(表面的な)を取れない国と違って、この国はもっと手段がたくさんあるのだ。おそらく布袋寅泰が持っている「遊び心」を満たす最高の環境が実はロンドンの音楽シーンには転がっているように思う。

そんな環境の中で、大御所やかつての旧友と肩を並べて演奏する布袋さんよりも(もちろんそれも続けるべきだと思うが)、ロンドンの面白い若いアーティストと競演するHOTEIを僕は観たいし、それこそ彼の新しいロックのあり方をみせつける絶好の機会になると思う。突然RIP SLYMEの横でギターをかき鳴らして、当時の若者に「布袋」を認知させたあのときのような遊び心をロンドンでも観たいなあと心から思っているのである。さらりと新しいことをかましながらロンドンの先端を走っている布袋寅泰を観れる日を僕は待っている。


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