LONDON COLUMNING

ロンドンから音楽事情を発信していきます。音楽以外もたまにはね。

【COLUMN】おそらく史上初、ロンドンからTHE MANZAI2013講評(速報)

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僕はロンドンに住んでいる。家にテレビはない。もしあったとしても日本のテレビ番組なんてもちろん映らない。そう、今年はTHE MANZAI2013が観られないのである。M-1とTHE MANZAIを通して13年間で生中継を見逃すのは今回が初めてである。生を見逃した上に、流れてくるニュースや誰かの投稿で結果を知ってしまうなんて残念すぎるので、ニュースサイトは見ないと決意。(何とか結果を知らずに動画にたどり着けやしないだろうかという微かな期待を抱く)ただちょうどFacebookで連絡を取り合っている友人がいたのでFacebookはある程度見なければならない。というわけでケータイやPCを薄目でチェックするという苦行が続くわけである。僕は異国にまで来ておいて、暗い部屋で一人日清出前一丁をすすりながら極東のコメディ情報を受け取りたくないただそれだけの理由で薄目でインターネットに興じているしがない男である。ケンドーコバヤシの元相方が死にたいけど死にたくなくて薄目で原付を運転していたという話を思い出して笑えた。13年前の自分が見たらきっと笑うんだろうなあなんて思いつつ。

が、これが予想以上に苦行なのである。知りたいという本音はあるけど、文字情報では知りたくない。先にネタが観たい。幸か不幸か僕のFacebookには数多くのお笑い好きがいるし、高校の同級生にはお笑い芸人、お笑い番組ディレクター、高校の先輩は伝説のバラエティ番組プロデューサー、元会社の同期には現役芸人、元吉本芸人もいる。何なら僕の元働き先のボスはお笑い評論家なのである。明らかにFacebookの投稿におけるTHE MANZAIネタ率が高いのである。薄目にしても明らかにそれっぽい投稿だと分かってしまうのである。日々是苦行状態である。ただその苦行もTHE MANZAIの番組終了後2時間たったところまで。そう、番組終了2時間後には全てのネタがインターネット上で閲覧することができたのだ。今年はあの苦行に破れて、テキストで銀シャリの栄光を知ることになるのか(勝手な願望)と諦めかけていたとき、ぽっと現れたまとめサイト。一体世界はどこまで便利になるのか。インターネットの偉大さを改めて感じた2013年冬。


2013年12月16日00:13(日本時間)
僕のTHE MANZAI2013が幕をあけた。
http://geinolabo.ldblog.jp/archives/4661452.html


ちなみにこのまとめサイトを探すときも基本薄目で結果を見ないように最新の注意を払いながら検索した。結果としてはこの動画を見るまでは、「東京ダイナマイトが何かやったらしい」くらいの前情報のみでネタバレはほぼなかった。

ただこの経験から痛感したのだけど、ありとあらゆる情報が最適化されていき、自分に必要な情報、もしくは潜在的に必要度が高い情報がGoogle先生方のおかげで受け取ることが出来る時代は、今回のような場面では極めてマイナスの効果を発揮する。今回のように知りたくないと思っている情報でもその情報が勝手に流れ込んできてしまうこともあるのだ。しかもそんなに意識して検索しているわけではない状態のときにその情報が現れたりなんかするもんだからそりゃあ憤慨ものである。というわけで突然ですが、提案します。「僕の今欲しくない情報」を打ち込めるタブを開発してください。スポーツ中継の情報、公開中の映画の情報、その他諸々のネタバレというものが発生しうるジャンルにおいては需要があると思います。便利ばかりを追求するのではなく、あえての不便も作ることで、余白のある生活も堪能したいと僕は思うのです。

「明日録画で観るから昨日のドラマの展開絶対知らせないでね、お願いね」とか

「ついつい見ちゃう下田美咲をテスト終わるまで見ないぞ、後は任せた」的な。

というわけで、今回は音楽ネタでもなければロンドンネタでもないですが、おそらく史上初のロンドンからのTHE MANZAI講評だと思いますので、お付き合い頂ければと思います。僕の事前予想はノンスタイル優勝、オジンオズボーン準優勝、銀シャリ3位、でした。ネタを観て同時につけたコメントと点数をそのまま転記したいと思います。

カテゴというわけで、今回は音楽ネタでもなければロンドンネタでもないですが、おそらく史上初のロンドンからのTHE MANZA

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トレンディエンジェル 75点(基準点)

トップバッターの重圧を避けるための前座的な扱い?それぞれのネタ自体しか動画が観られないので(後に改善)、なぜ突然現れたのかはちょっと分からないけれどせっかくなので基準点として扱わせてもらうことにする。トップ(前座)としての役割は見事にこなしていた。髪の毛ネタは掴みまでにして何か新しい展開が欲しいところ。敢えてそこに触れない漫才も観てみたい。基準点としての75点。

<グループA>

レイザーラモン 74点

彼らの漫才を観るのはかなり久しぶり。勝ちにきたというよりもそれぞれのキャラを関係者に見せにきた感が強かった。特にRG。HGの葛藤が良い方向に表現できていたらもう少し高得点をつけたが。笑うポイントはあったが、漫才としてはイレギュラーな行為が多く、そのイレギュラーが笑いに繋がりきれていなかったので74点。でもそれぞれの仕事はこれでまた増えそうな気がする。

チーモンチョーチュウ 80点

漫才としてのバランスは非常に良かった。途中からオチが見えていたが、それでも最後まで飽きさせず上手く落としていたと思う。3組目でやっと本日初の普通の漫才を観たかなあという感想。少し整いすぎていたので、観客側のテンションの上下が少なかったように思う。もう一山見えない角度からのパンチがあれば一気に高得点になっていたなあと。というわけでの80点。

オジンオズボーン 85点

単純に面白かった。前半の突っ込みをもっと激しく(感情的に)していたら、いいのになあと思っていたら、諦めからの仕返しというブリッジになっていて、思わず納得。「そうだ、クリームソーダ」というダジャレであそこまで笑わせるのは流石。“割り込めないぞう”さんが登場してからもう一ボケあったら+3点あったかも。ぶっちぎりのグループ首位85点。

千鳥 78点

いつものような強引なワードが少なかった分、構成に期待したが、期待には届ききらなかった感じ。スパムを引っ張るのはさすがに危険かなと思ったけれど、もう少しスパムを料理して千鳥にしか出せない味に仕上げても良かったのかなあと。いつもに比べて粘着力が弱かった。78点。

 <グループB>

学天即 87点

頭から最後までしっかりと笑うポイントがあって、綺麗にまとまっていた。突っ込みのアナウンサーのような出で立ちとしゃべり方がこのネタに凄くマッチしていた。素直に“見終わって気持ちいい漫才”を観たという感想。本日暫定1位87点。

風藤松原 79点

よくある諺漫才。ボケが右側なのでこれまでに既視感から変な感覚に教われて少し頭が混乱して見始めてしまった。それでも小気味好くボケに突っ込みが重なってくるので、観ていてというより聴いていて心地いい漫才。ただ題材自体が諺で見慣れているのでもう一つか二つ個性が欲しかったというのが本音。期待していたからこそ少し厳しめの79点。 

銀シャリ 83点

何年も前から個人的に好みの彼らの漫才。今回のネタはその中でもひいき目なしに面白かったし、まとまっていた。ただし入ったグループが悪かったなあ。良い意味でのこれくらいの安定感が銀シャリの魅力。一発の爆発力には欠けるので東京のショーレース的なものではこの辺りが限界かと。(でも個人的には一番好きなスタイル)堂々の83点。鰻ちゃんお疲れさま。

ウーマンラッシュアワー 93点

いつも通りのスタイル+新しさが加わって、革新的な漫才に。久しぶりに観た“次の年も話したくなる漫才”。会場を巻き込む技も巧み。普段からtwitterをあえて炎上させているだけあって、観客を巻き込んだ笑いの取り方は見事。圧倒された。半分くらいは今までのスタイルを踏襲しているのに彼らのネタを初めて見たときよりインパクトのある漫才だった。このままいけば普通に優勝すると思う。今回のダントツ93点。(やっぱり銀シャリはグループが悪かった)

 <グループC>

天竺鼠 72点

緊張が伝わってきてしまった漫才。それでも途中からはいつもの世界観に引き込んでくれたが、最後まで不可解なままで終わってしまったという感想。ちょっと千鳥路線を狙ってきたのかなと思ってしまうような作り。普段はもう少しまとまりがあるように思えたが、なぜ今回このネタをチョイスしてきたのか疑問。ごめん厳しいかもだけど72点。普段もっと面白いじゃないか!

NON STYLE 90点

M-1チャンピオンとしての貫禄。安定感のある漫才。苦言を呈すならば二人のスタイルに対する既視感。でもこればっかりはM-1チャンピオンが背負って行く宿命でもあるので、そういう捉えられ方をすることは折り込み済みなはず。決勝でどのようなネタでひっくり返してくるのかが楽しみなところ。おそらくウーマンとの一騎討ち。新旧対決に期待大。90点。 

東京ダイナマイト 86点

流石のTAKESHIイズム。師匠を笑わせにいった感があるけれども、それを踏まえてもここであのネタをやる度胸とそれをストーリーにしておきながらもオチにさせない巧妙さというかお洒落さ。今までの中で一番点数をつけるのが難しいネタ。漫才というより“芸”というか何というか。でも釘付けになっている&笑っている自分がいたのでポジティブ評価。頭から最後まで流れるような展開+批評性に高評価。86点。2本目は切れ味が悪くなりそうな予感がするが。まあこの組はおそらくノンスタイルなので観られない気がする。切れ味ちょっとみてみたいけど。

流れ星 78点

ワイルドカード、流れ星。事前の番組でもちゅーえい大活躍だったので、納得の決勝進出。漫才というよりコントだったけれど、今後仕事は確実に増えるだろうなあ。同じギャガーでも、オジンオズボーンは漫才のストーリーとして楽しめるギャグ。こちらは単体でも楽しめるギャグ。逆に考えると漫才である必要性が少し低いのでその辺りが改善されるともう一歩上にいける気がする。78点。

【個人的順位(12組)】

1位:ウーマンラッシュアワー:93点(B)

2位:NON STYLE:90点(C)

3位:学天即:87点(B)

4位:東京ダイナマイト:85点(C)

5位:オジンオズボーン:85点(A)

6位:銀シャリ:83点(B)

7位:チーモンチョーチュウ:80点(A)

8位:風藤松原:79点(B)

9位:千鳥:78点(A)

9位:流れ星:78点(C)

11位:レイザーラモン:74点(A)

12位:天竺鼠:72点(C)

 ※  実際の結果は下記に画像添付

 僕の決勝進出予想はウーマン(B)、ノンスタ(C)、オジンオズボーン(A)。なぜ千鳥が決勝進出なのかが納得できないという意見が多くあがってそう。僕は関西出身で昔から千鳥は好きだし、彼らのスタイルも理解しているつもりだけど、今回の一発目のネタは彼らの力の半分くらいしか出せていなかったように思う。でもM-1における笑い飯的なポジションに彼らがいることは確かで、そこにある見えない文脈を評価したい気持ちが生じるということは理解できる。だとしても今回のネタでそれを託すのは少しアンフェアに思えた。M-1最後の笑い飯くらいのストーリーがまだTHE MANZAIにはないのだからその見えない文脈を票にたくすのはいかがなものかと。オジンオズボーンの出来が良かっただけに個人的に納得がいかない采配。他はまあ妥当な判定。銀シャリに巨人師匠の票が入って良かった。学天即0票なのが驚き。個人順位では3位だったのに。何にせよB組はウーマンぶっちぎり。決勝楽しみ。

 

【決勝3ネタ】

NON STYLE

安定感、オリジナリティ、構成、全体のバランス、どれも完璧。流石M-1チャンピオン。ただし1本目のウーマンを超すような新規性&破壊力は感じられなかった。あとはウーマン次第か。

千鳥

一本目より明らかに良かった。千鳥は多分本気で狙いにいっていたと思う。もともと2本目に置いておいたような気がする。もう漫才として面白いかどうかではなくて、千鳥を好きかどうかで審査員は選ぶと思うので、この漫才をやりきったならウーマンが転べば可能性はある。

ウーマンラッシュアワー 

1本目と同じ体裁の漫才だったけれど、敢えてスタイルを変えずに行った結果が大当たり。もしバイトリーダーのネタをやっていたら、危なかったかも。途中で日清に触れる余裕も素晴らしい。オチまで笑いっぱなし。圧倒的。後半で1本目の面白さまで達して最後には捲ったと思う。今回は完全にウーマンの年でした。 

決勝は本当にどの組も面白かった。それぞれが個性を出せていてM-1時代から含めても、3組ともに実力を出し切った度は個人的には最も高かった気がする。それにも関わらず、ウーマンの圧倒的破壊力に全てを持って行かれました。いいもの観られた。これでウーマンじゃなかったら大会の存在意義を捉え直さないと。とにかく、ありがとうインターネットちゃん。ちゃんと全ネタ普通に観られました。決勝結果予想1位:ウーマンラッシュアワー、2位:NON STYLE、3位:千鳥。

 

(結果を見て)

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1位:ウーマンラッシュアワー(5票)

2位:千鳥(3票)

3位:NON STYLE(2票)

優勝は確信していたので、ウーマンで間違いないけれど、2位に関して少し。やはり漫才としての評価はNON STYLEに軍配が上がるべきだと思った。千鳥の二本目に関しては「らしさ」も出ていて評価できるけれども(一本目の3倍くらいよかった)、今年に関しては7割以上がウーマンに集中してもいい出来だったのではないかと思います。あと途中で芸能人をワイプの抜くのはいい加減に辞めてもらいたい。3人目の相方までなら100歩譲って映してもいいけど。とりあえずお疲れさまでした自分。改めてありがとうインターネットちゃん。世界は緩やかに、でも確実に繋がっていることを体感しました。いつかイギリスのコメディを批評できる日を夢見て。それではごちそうさまでした。


漫才 THE MANZAI 優勝漫才 ウーマンラッシュアワー 20131215 - YouTube

ネタとネタの間に書きなぐった文章なので、読みづらいところ等あると思いますが、ご了承ください。敢えての生感をこのまま残したいと思います。