LONDON COLUMNING

ロンドンから音楽事情を発信していきます。音楽以外もたまにはね。

【GIG】11/28 Bob Dylan@Royal Albert Hall

まさかあのロイヤル・アルバート・ホールでボブディランを観られる日が来るとは夢にも思わなかった。ボブディランがロイヤル・アルバート・ホールでライブをするのは実に47年振りのこと。「ボブディラン/ロイヤル・アルバート・ホール」といえば、それまでのフォークスタイルではなくエレクトリック構成で登場して観客から「Judas」と叫ばれたあの事件の現場だと言われている。それが47年前、1966年のこと。(実際にはマンチェスター公演での出来事らしいが、その音源が「ロイヤル・アルバート・ホール」という冠の付いたアルバムに収録されたので一般的にここでの出来事として記憶されていることが多い。)そのときの映像があるのでまずはご覧頂きたい。


Bob Dylan "Judas" - YouTube 

(観客)「Judas」「I'm never listening to you again, ever!」
(Dylan)「I don't believe you」「You're a liar」

 そして「Play it fuckin' loud」という言葉の後に“Like a Rolling Stone”が始まる。もしロックの教科書があるのなら確実に年表に載るであろう重要なシーン。色んな評論家がそのことについて言及しているし、色んな解釈があっていいと思うが、僕は一ファンとして、このやり取りが好きだ。もちろん当時既にスターだったディランに罵声を浴びせるなんてとんでもない時代だと思う。それに対するディランの返しも歯切れが悪い気がする。でもこのリアルなやり取りが僕は好きだ。ここでディランがエレキギターをぶん投げて観客と殴り合っていればロックの歴史は変わっていたかもしれないし、そっちの方がロックローラーとしての美談になり得たかもしれない。たった二言しか言い返さなかったディラン。そして歌い続けたディラン。「How does it feel?」という言葉で言い返したディラン。こういうところが今でも文化系男子の憧れの的であり続け、ヴィレッジヴァンガードで詩集が売れ続け、みうらじゅんが映画の題材にする要因なんじゃないかと勝手に推測して楽しませてくれるのもディラン。ギターを叩きつけないで、27歳で死なずに、今こうしてあの会場に帰ってきたディラン。

チケットはもちろん即日完売。どうしても観ないといけないという衝動に駆られて、チケット転売サイトを物色したが、どのサイトでも一番最低の座席で100£はする。結局当日週まで粘ったけれど、SEATWAVE(チケット転売サイト※使い方は過去記事参照)で、2倍価格で購入。一番遠い立ち見席で100£。ロイヤル・アルバート・ホールでライブを観ること自体初体験だったのでできれば座席を確保したかったが、やむなく断念。コンサートは3日程あったが、最終日を選択。チケットを確保できただけでも幸運だと自分に言い聞かせる。

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そしていよいよ当日。11月28日木曜日、ロンドンはいつも通りの曇り空。ピカデリーライン(青)のサウスケンジントン駅から歩いて10分くらいのところに位置するロイヤル・アルバート・ホール。駅から地下の遊歩道が会場への最短になっているので、地図なしでも迷うこともない。遊歩道では2、3人のストリートミュージシャンがディランの曲を歌っていた。会場に到着して観客をざっと見回してみるとやはり年齢層は高め。前座なしでの開演という注意書きもHPで確認していたので、物販だけ少し確認していざ立ち見席へ。同世代もいなければ、アジア人も皆無。もちろん探せばいるんだろうけれど、僕の周りには誰一人としていなかった気がする。コンサートは2部構成。割と新しい楽曲も多く、現在進行形の彼の姿を観ることができた。菅野ヘッケルさんのレポートに書いてあったが、初日は「エクセレント」、2日目は「アベレージ」、3日目は「エモーショナル」だったらしい。僕はお金もないので3日目しか観ることができなかったが、初めて見るディランということもあり、本当に時間を忘れて彼の声に酔いしれた。本当にディランが僕の目の前で(かなり遠かったけれど)あの声で歌っていて、あの音でハーモニカを吹いている。さらりと登場して、“Things Have Changed”を演奏してから、一度休憩を挟んで、一気に最後の“Blowin' in the Wind”までを歌い上げたが2時間が本当に一瞬のように感じられた。物事は移り変わって行くけれど、風に吹かれて僕も何とかここで生きている。今日もディランはどこかで誰かのために歌っている。今日歌わなかった“Like a Rolling Stone”を死ぬまでにこの耳で聴くことを人生の目標にすることにした。できればマンチェスターで。それまでは今月いきなり公開されたこの最高にクレバーなMVでも観て、Play it fuckin' loudしてやり過ごしていこうと思う。
http://video.bobdylan.com/desktop.html 

 

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ちなみに現在ロンドンでは彼の個展(鉄の彫刻)が開かれているので、彼の音楽以外の作品に興味がある方は是非。場所はOxford Circus駅とBond Street駅の丁度真ん中くらい。HMVにでも寄った帰りにふらっと立ち寄ってみてはいかが?期日は14年1月25日迄。こちらのレポートはまた後日。

http://www.halcyongallery.com/exhibitions